「メンサ」という組織をご存知ですか?
メンサは、知能指数 (IQ: Intelligence Quotient)が全人口のトップ2%の人たちの交流を目的とした非営利組織です。会員数は、全世界で12万人おり、世界40カ国に支部があります。
実は、マインドマップの考案者であるトニー・ブザンは、若かりし頃に学術ジャーナリストとして活躍し、このメンサの国際的機関誌の編集に携わっていました。
その際、トニー・ブザンは、イギリスのBBC (英国放送協会)から教育番組の企画の相談を受けます。
これがきっかけとなり、彼は、「頭がよくなる本(Make the Most of Your Mind)」を1977年に執筆。
その後、マインドマップの考案者として、多数の著作、講演など多方面に活躍し、世界で知られるようになっていったのです。
メンサには、以下の3つの目的があります。
トニー・ブザンの人生を見ると、メンサの活動目的と非常に一致点があることが伺われます。
トニー・ブザンの研究は、まさに「知性の原理」を解き明かすものであり、彼は常に、人々の才能を引き出すことを仕事としてきました。
知性を高め、その人の本来の才能を引き出すものが、マインドマップという思考ツールなのです。
メンサの日本支部は、「JAPAN MENSA (ジャパンメンサ)」で、現在、会員は1,800人だそうです。
入会条件は、宗教、学歴、職業、政治的信条などは一切問わず、全人口のトップ2%のIQを持っていさえすれば良いというものです。
その職業はさまざまで、大学教授もいれば、トラックの運転手やペンキ職人、音楽家もいるといった面白い組織です。メンサは、ある意味、本当に多様な人たちが集まる場であるとも言えます。
メンサの会員は、いわゆるエリートとは異なります。学校や社会で「優秀」であることと、本来の人間の持って生まれた能力とは異なるからです。
実は、学校の成績は悪かったり、社会で上手くやっていくことに苦労している人たちの中にも、高いIQの人たちは大勢いるのです。
たとえば、アスペルガー症候群のような発達障害と呼ばれる人たちの中には、大変高いIQを持つ人がいることが知られています。これらの人たちは、脳の機能に偏りがあると言われており、その偏りが社会への適応を難しくしているものの、本来の能力は非常に高いのです。
しかし、その能力を社会の中で上手く活かすことに成功している人たちもいます。たとえば、アインシュタインは、アスペルガー症候群であった可能性があると言われています。
また、プログラム開発の世界などでは、アスペルガーの人たちの能力なしには成果は上げられないという話もあります。
人間の能力や才能は、非常に多様なものです。
周囲と上手くやっていくことに苦労していて、「出来が悪い」「勉強ができない」などと言われている子たちは、実は、大変なIQの持ち主、大変な才能の持ち主かもしれませんね。
「ギフテッド」という言葉を、お聞きになったことはありますか?
先天的に、他の人たちよりも並外れた成果を出せる程度に突出した知的能力を持っている子供たちのことを、ギフテッドと呼びます。その才能が、天から与えられたギフトであるという意味で、「ギフテッド」と呼ぶのだそうです。
その能力が、芸術的な才能であった場合には、「タレンテッド」と呼ばれます。
並外れた才能を持って生まれているということは、端から見ると羨ましいことのように思えますが、実は、案外苦労も多く、ギフテッドには、特別な支援と個々人に合わせた教育方法や学習方法が必要であると考えられています。
ギフテッドは、知能指数 (IQ: Intelligence Quotient)が高い人と同義と捉えられていたこともありましたが、本来のギフテッドの意味は、単なる高いIQとは異なるようです。
現在では、以下のような定義が主流とされているようです。
子供、生徒、若者に対して、ギフテッド、および、タレンテッドという言葉が用いられた場合、知性、創造性、芸術、リーダシップ、あるいは特定の学術分野において高い潜在能力を示し、また、そうした能力をフルに開発するには通常の学校教育にはない支援や活動を必要とする子供、生徒、若者を意味する。 (スーザン・K・ジョンセンによる定義)
ギフテッドが、普通の人よりも高い成果を上げる能力を持っていることの背景の一つに、彼らの「過度な激動性」が挙げられます。
普通の人たちよりも、刺激に対して過度に感じやすかったり、過度に精神活動が活発だったりするために、人の数倍のスピードで深く学習することができたり、素晴らしい芸術表現ができたりするのです。
一方で、この過度な激動性のために、味わう感情の幅も大きく揺れ、苦楽も普通以上に強く感じます。
そのため、彼らにとって人生を送ることは、決して楽なことではないと考えられています。
ポーランドの心理学者 ドンブロフスキは、ギフテッドに見られる「過度激動 (OE: Overexcitability)」には、以下の5つがあるとしています。
ギフテッドは、こういった過度激動のために、同じ年齢の子たちとは違った行動を取り、そのため、周囲から変わり者扱いされるなどして浮いてしまい、孤独を感じることもあります。
また、周囲と違うことを嫌って、自分の才能をわざと隠し、普通以下の成績をわざと取ろうとしたり、過度激動を感じないようにするために、周囲から離れ、刺激を受けないようにしようとすることもあります。
ギフテッドは、ある分野においては、並外れた高い能力を持っているために、他の能力との成長の不均衡が目立ちやすくなります。
人間は誰しも、さまざまな方面での能力に不均衡が見られますが、ギフテッドの場合には、この不均衡が際立ち、得意不得意が激しいことがあります。
そのため、通常の教育では彼らの本来の才能を引き出しにくく、また、バランスある成長を促進できません。
このようなことから、欧米においては、ギフテッド個々人に合わせた教育支援プログラムを提供する学校が存在しています。
ギフテッドの子供たちは、普通の子供たちと感じ方や学び方が異なります。
そのため、時には、ADHD、アスペルガー症候群などの発達障害や学習障害、また、鬱、双極性障害などと同様の状態であると見られ、誤診されることもあります。
実際のところ、学習障害とギフテッドの違いも明確ではないようです。
ギフテッドは、非常に高い能力を持っているにもかかわらず、周囲に溶け込めないことを嫌って、能力を隠したり、授業中、普通の子のようにしていられないために、学習障害であるとレッテルを貼られたりしがちです。
大人たちが、誰しも人間には偏りがあることを認め、その人にあった学び方を許容することで、ギフテッドの本来の能力は発揮されるでしょう。
たとえば、マインドマップは、脳の自然な機能を生かした思考ツールですので、普通の学習方法が合わない子供たちにも、有効かもしれません。
マインドマップの考案者トニー・ブザンの著書「ザ・マインドマップ」の中には「学習障害と呼ばれている子供たちは、自分の特性に合った適切な学習方法を教育されなかったという意味で、本当は教育障害なのである」といったことが書かれています。
この言葉には、学校や教育者たちが、その子の特性に合った学習方法を用いて教育をする努力をしていないことに対する批判の意味も込められています。
それでは、学習障害とはどういうものなのでしょうか?
日本においては、旧文部省が、学習障害を以下のように定義したそうです。
「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」
学習障害と知的障害は異なり、知的発達には問題がなく、また、IQが高くとも学習障害を持つ人もいるようです。
学習障害を持つ人たちは、必ずしも、すべての学習能力や知的能力が劣っているわけではありません。ただ、学び方に特徴があるのだと捉えることもできるのではないでしょうか。
どのような人間も、「平均的でなくてはならない、周囲の人たちのできることはすべて普通にできなくてはならない」という考え方は、特徴ある才能を持つ人たちを排除しかねません。これは、社会にとっても大変な損失です。
トニー・ブザンは、こういった特徴がある人たちも、学習方法次第で能力を伸ばすことができると考えたのです。
たとえば、先天的に、並外れた成果を出せるほど突出した知的能力を持っている「ギフテッド」と呼ばれる子供たちの中にも、学習障害を持つ子供がいます。
こういった子供は、大変すぐれた能力を生まれながらにして持っているにもかかわらず、見過ごされ、能力を伸ばせず、また、社会の中でも認められずに生活していくことになるのです。
能力の伸ばし方、学習の仕方に工夫を加えることで、こういった才能ある人たちの能力を開花させることができるのではないでしょうか。
マインドマップのインストラクタートレーニングの時に、最初に感じたことは、「マインドマップがあれば、世界中の人たちの能力を活かすことができるのではないか」ということでした。
マインドマップは、従来のいわゆる「エリート教育」に欠けていたものを補完します。
言語的能力に長け、話をしたり、文章を読んだり、書いたり、ということに高い能力を発揮する人たちは、学校での成績も高く、社会においても上手くやっていくことができるエリートタイプでしょう。こういった人たちは、一通りのことをこなすことに長けています。けれど、特徴ある能力を持っているわけではありません。
学校での教育も、現在は、こういったエリートたちの能力を伸ばすようなものになっているかもしれません。
一方で、視覚的に把握することが得意な人や、言葉では上手く表現できないけれど優れた情報処理能力を発揮する人たちもいます。こういった人たちには、今までの学習方法よりも、イメージや関連性など、脳の自然な性質を活かすマインドマップを使った学習方法のほうが向いているかもしれません。
そして、この人たちは、すべての面において平均的な能力を持つエリートたちにはない、特徴ある能力を発揮することができる可能性を持っているのです。
実は、トニー・ブザンは、過去にノーベル平和賞に3回ノミネートされています。
マインドマップは、言葉の違いを超え、イメージでコミュニケーションすることができるツールです。別々の言語を使う人たち、異なる国籍を持つ人たちがコミュニケーションする際に、非常に役に立ちます。
世界中の人たちが、言葉をまたいでコミュニケーションすることができれば、相互理解が深まり、世界平和への道が一歩前進するのではないでしょうか。けれど、ノミネートの理由は、それだけではないでしょう。
マインドマップは、多様な能力を持った人たちの才能を活かすことのできるツールでもあるのです。脳の自然な機能を活かした思考ツール、学習ツールであるマインドマップを使うことで、今まで才能を伸ばせなかった人たちも才能を伸ばすことが可能になるのです。
これまで「能力がない」と言われていたような人たちが、自分の能力や才能を発揮できるようになれば、どうでしょうか?
きっと多くの人が幸せになれ、世界から争いも減るのではないでしょうか。